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春を待ちわびて

· 七つの茨道

深々とした夜に雪がはらはらと降り続ける。
空から落ちた雪は、アスファルトに溶け、地面を濡らす。
冷え冷えとした外の空気は窓に触れるまで実感出来ない。

「外の景色見てたの?」
湯気の出たマグカップを二つ持って、台所からカナメが出て来た。
「冬もいいんですけど、やっぱり春が待ち遠しいなって、思いまして」
「雪が溶けたら少しは歩きやすくなるよな」
絨毯に座り、新しく注がれたココアに口をつける。
「雪の結晶は、綺麗で好きだけど」
「とっても綺麗です」
お部屋でゆったりとしている時の彼はいつもと違って少し大人びて見える。
いや、いつもは遊ばれてるから幼く見えるだけか。
背中に寄りかかって、ふと上を見上げると視線が合う。
恥ずかしくなって目を逸らすと「なに?」って、頭をくしゃっとする。
構って貰えた嬉しさ、と言っては語弊があるかもしれないが、
とにかく、この一連の流れが嬉しい事であるのには間違いないのだ。
だから、お返しに私もカナメの頭を撫でる。
彼の髪はサラサラじゃなくてふわっとしている。
不思議なのでずっと撫でていたいが、
それをすると腕が痛くなってしまうのが難点だ。
「アスカはワンピース似合ってるよ 可愛い」
好きな人に褒められると、感情がふわふわと浮かぶ。
それに名前など付けれないのだ。
「デートの時、カナメを見るときゅーってなりますよ
デートの為にお洋服選んでくれたんだなーって……」
熱くなりすぎた頬に手を添えて「少し、自惚れてしまいます…
カナメの恋人なんだなって肯定されてるみたいで恥ずかしいけど、嬉しいんです」
「アスカ」優しい声は心に届き、体は力強く抱きしめられる。
「俺の恋人は、アスカだから。…全部、アスカのものだから」
よく考えると頭を撫でる行為も好きじゃない人間にされると、
気持ちの悪いものだが、カナメにされたり、したりする行為が嫌だなんて思ったことはない。
前髪を手であげて、額にキスをしてこちらの赤らんだ顔を見せない様にして
すぐにそっぽを向く。
だけど、その仕草もカナメからのキスで意味などなくなってしまう。
「早く、雪、溶けて欲しいですね。」
ぎゅっとくっついたまま「こうしてるのも好きだけどね」
愛しそうに、楽しそうに笑う。
カナメのことは正面から見るとやっぱりまだ照れてしまう。
普段はオオカミと一緒に遊んでもらっているけど、
二人で居るとカナメは、落ち着きがあって頼りになる人なんだと心から思う。
どうにも熱くなる胸の奥を悟られたくない気持ちと、
全てバレてしまって私の想いを受け入れて欲しい気持ちが混ざりあって
カナメに触れてしまう。
肌より、髪の方が熱が伝わらないだろうと思って。
でも、彼の笑みを見ると、全て知った上で、
あえて黙っているようにも見えるので唇になんてキスしない。
カナメからしてきても手で塞ぐ。
「アスカは意地悪だなぁ」
手の甲に優しく口付けをして微笑む。
「ここが一番いいって思わせたら、今度はアスカからキスしてくれよ?」
唇を指先で触れられただけで、体の芯まで熱く身動きが取れなくなってしまう。
赤い顔のまま固まってしまった私を解す様に、
暖かな手が髪に優しく触れるから、カナメへの好きを全部、全部
伝えて受け止めて欲しくなるのだ。
春を待ちわびて、冬に愛を重ね合う。
深々と降り積もる雪の様に消えない愛を確かめ合う。

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