· 七つの茨道

「浮気の手口は年々、巧妙となっていき…」

温泉に置かれたテレビを横目に茜さんはこちらを見て、
「大和さんは…… 明彦さんと浮気してるから当てはまっちゃう…」
飲んでいた茶を吹きこぼすような発言をする。
「何言ってるんですか! 明彦は男です!」
「男同士でも、愛があれば構わないんでしょう!」
「既婚者ですよ 俺達!」
「偽造結婚…」
「愛してますって!」
「明彦さんを…?」
「茜さんだけをです!!」

偶に頓珍漢な事を言うのが茜さんの悪い所だ
確かに、明彦とは古い付き合いだが、互いに恋慕など抱いていない。

「それにね、茜さん もし、明彦が本当に俺のことを好きなら、

見合いもさせんでしょうし、結婚だってさせないでしょう。

まぁ、元も子もない話を言ってしまえば、明彦が化けて女になることだって可能です。」
「…それもそうですけどね でも、仲良しじゃないですか 二人は」
「……俺の特別なんですよ。 明彦は 」

「そうじゃないと、あいつは駄目なんです。」
社さんと、和雪さんが妖界に来た最初の頃です。
俺は普通の人だと思いましたけど、明彦から見たら違ったそうなんです。
諺も確かにそんな様な事を、はぐらかしつつ言ってた気がします。
実際、かなりの妖力を持っていた様でビックリしましたよ
まだ使いこなせてはいなかったみたいですけど、それは後々…
でね、明彦が珍しく寂しげな声で言ったんです。
「僕は、…僕の一族は特別なんかじゃなかった」って。

葛葉一族は高い妖力と、変化の術を主体に色々な事をしていました。
だから、明彦も例外に外れること無く、「特別」だと言われ続けた。
幼い頃から修行を受け、遊びにも行けず…
それは明彦にとって「特別であるからこそ、与えられた使命」だった。

「武力じゃ、諺ちゃんや、狗邏君に負けるし、…まぁ、鈴ちゃんにも負けるだろうし。
でも、僕には妖術があるから、って思い込んでた。……僕よりあの子らの方が強い。」

大丈夫ですよ。茜さん
明彦は劣等感に負ける様な男じゃありません。
そもそも比べる土俵が違ったと、気付ける男ですから。
明彦は変化こそが特別な任なのだとすぐに悟りました。
そして、変化を最大限に生かすのは空間であると。
明彦は大きな空間を造り上げる練習をしていました。毎日ね
そして、赤い折り紙で小さな風船を作りあげました。
最後に息を入れて膨らませる紙風船です。
二、三度ぽん、ぽんっと手で弾き、机に落としました。
それを手の平で押し潰し、中からは血が。
明彦は手品だと言いました。本当かどうか知りませんけど
風船とは何を示唆した物か。
それはあいつにしかわかりません。
ああ見えて、悪趣味な野郎ですから。

「茜さん、明彦は俺にとって特別な親友です。特別でいないと、明彦は脆く崩れやすいんです。
ま、だからと言って、変な事したら親友じゃないですけどね」
「大和さんにとって、明彦さんって凄く特別な人なんですね。

……私ったらやきもち妬いちゃって恥ずかしい」

「…大和 いつまで嘘を喋ってるんだい?」
「明彦ぉ!」
べたりと張り付く妙な体温を引き剥がす。

「嘘ばっかり言って!」
「う、うそ?」
「嘘ですよ 何故なら、コイツは明彦本人だからです!」
と、明彦の顔をした彼が言う。
「えっ!? 明彦様は私の隣に…」
「えー、もう折角、茜ちゃん信じてくれてたのに」と、大和の声で明彦が語る。
変化を解くと、茜の隣に明彦が立っていた。

「もしかして、入れ替わってたんですか…?」
「そーそー 僕も中々上手でしょ 大和の真似やっぱりラブラブだからかな~?」
「わ、私も負けません!! 私の方が上手です!!!」
「もう勝手にしてくれ」

飽きれる大和の隣に、真香が寄る。
「これは独り言なのですが、最初から二人は、入れ替わってなど、いなかったのではないですか?大和様は大和様。明彦様は明彦様。

先程、明彦様が声をかけた時、あれは変化を解いたのではなく、行ったのでないかと…」

「だから、今、私の隣におられるのは、明彦様ではないですか?」
「……流石、僕のお嫁さん。大和が乗るとは思わなかったけど… なんでだろうね?」

「ふふっ 大和がラブラブって言うの面白いね」
「仲がよろしい事でなによりです。」
「頃合見て、変化解くよ ちょっと待ってて」
「はい、待ってますよ 明彦様」

真香の微笑む顔を直視出来ない。

「あーあ、大和の体も楽じゃない」と、明彦は笑うのであった。

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