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微睡みに融ける

· Azalea

春の陽気は、人々を眠りの世界に誘う。
そしてこの家の中も例外ではなく、一人が寝転べば、また一人、また一人と眠っていく。

「春歌さんの手で撫でられるとすぐ寝ちゃうんだよなぁ」
春歌の後ろで横になり、暖かな体温を毛布代わりに重たい瞼を閉じる。
「寝ちゃってもいいよ」
薄い毛布を春輝にかけて、その頭をゆっくりと撫でる。
それに抵抗すること無く身を任せ、安定した寝息を立てる。
「おやすみ」
優しく微笑んで、寝ている彼をもう一度撫でた。

「寝たの?」
別室に居た秋羽が春輝の寝顔を見つめる。
「さっきね」
彼女は彼から視線を外し、次の行動を決めかねているようにも見えた。
「隣、おいで」
彼女は兄からの提案を素直に受ける。

春輝と同じ様に頭を撫でると、肩に寄りかかって
「私も、春輝みたいに寝ちゃいそうだわ」
「秋ちゃんも寝たらいいよ」
「私は…、……少しだけ、休もうかな」
春輝の隣で兄に頭を撫でて貰っている。
兄の体温が高いだけじゃなく、それが自分に移ったみたいに暖かくなっていく。

夢心地の中、ふと兄さんの頭は誰が撫でるのだろうと考えた。

「兄さんは寝なくていいの?」
「僕は大丈夫 昔ね、母さんに撫でてもらってたんだ」
優しくて、強い母親。
「だから、今度は僕が皆を寝かしつける番!」
「じゃあ、今度は私に娘が出来たら、その子を寝かしつける番なのね」

言葉にしなくても温かさは人から人へと伝わっていく。
何もかも、微睡みに解けて逝(ゆ)く。

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