冬兎を家に送り、そのまま俺も家にお邪魔する。
「たっだ、いま~」
冬兎が靴を脱ぎ捨てて、居間に走り出す。
その靴を並べてから、自分も靴を脱ぐ。
「おかえり」
何一つ着崩されていないきちんとした格好。
彼女はいつも無表情だと言われるけど、俺には嬉しそうな顔してるってわかる。
「ただいま」
彼女の小さな体を抱きしめる。
「寒かった?」
「ううん、そうでもないよ」
「……風邪、引いたら看病してあげる」
「ナースさんの格好してくれるって?」
「…ばか そんなこと言ってない」
拗ねた顔も、怒ってても離さない所も全部、全部可愛い

「コート、そろそろ脱がせて」
『待て』を待つ犬みたいに大人しく立って尻尾を揺らす。
「はい、いい…」
言い終わる前に抱き着いて頭を押し付ける。
「…いつもと違う匂い」
「香水、新しいのにしてみたの」
「いい匂い」
ふわっと微笑んで幸せそうに胸に収まる彼女
「秋羽ちゃんのこと、好き」
顔を見上げた彼女とキスを交わす。

「春輝にーちゃ、ゲームしよーー!」
リビングの方から冬兎の元気な声が聞こえる。
「今、行くよー!」
手を離しかけた時に、「もう少しだけ」
彼女の方から甘い口付けを残す。

「もー!遅いよ!」
「ごめん、ごめん」
謝りながら隣に座り込む。

「春輝にーちゃん、新しい匂いするよ!」
隣に居ると匂いがわかるのか、きらきらとした目で話す。
「秋羽ねーちゃんに抱いてもらう為なんでしょ?春輝にーちゃん酔った時、お話してたよ」
悪気ゼロな言葉は俺の羞恥と、秋羽のサドっ気を引っ掻くには充分過ぎた様で、

「耳まで真っ赤よ 春輝」

「な、なんのことかな~…」

「知らばっくれなくたっていいの」
腰をスッーと指の腹で撫で上げ、「お泊まりして行って」
それだけ言うと彼女はいつもの俺の背中(していせき)に寄りかかるのだった

彼女は一人が好きだ。
それは孤独を指す言葉でなく、一人遊びの意に近い。
今も彼女の瞳は文字列を追う。

邪魔しちゃ悪いと俺は彼女から離れる。
「どこ行くの?」
「邪魔しちゃ悪いかと思って」
彼女は首を振って俺の行動を否定する。

本に栞を挟んで閉じ、動向の意を見せ袖を掴む。
「どこにも行かないけど…構って欲しいなって。」
俺の手に頬擦りする仕草はまるで猫みたいだ
飽きた彼女が正面から倒れ込むのでそれを受け止めて、背中側に向き直させる。
ぽけーっとしてる顔は兄妹そっくりで少し面白い。
お腹を触ると良いと悪いとも言わない顔で好き勝手させてくれる。
少し上に手を滑らせ柔らかな膨らみを揉むと
「だめ」
「やだ~触る」
彼女はほっぺを引っ張って駄目だと言う。
「手はお膝に~」
正確には、太腿に敷かれている布を僅かにズラす


「…えっちしたいってことだったの?」
彼女は呆れた仕草を大袈裟にして見せた。
「俺の事考えて欲しかったんだよ
秋羽ちゃんと二人で居られないからさ~ …皆でわいわいも好きだけど」
「春輝こそ常に誰かと居るじゃない」
「……秋羽ちゃんと居ないと寂しいもん」
子をあやす様に頭に手を置いてなだらかに指は首へ落ちる「もう少し束縛したって、いいのよ」
いつもは可愛いのに、この時ばかりは色香に酔った

彼女が上目使いで、見つめる瞳に、俺が映る。
熱い、熱い 顔も胸も、焼け付くみたいに熱い
「あはは じゃあ、緊縛もしてもらおうかな」
熱さを誤魔化す為に冗談を零す。
「そんな趣味ないわよ」


冗談を聞き流すのを、ほっとした面持ちでいたら
「この顔をどうやってやろうか とは、思ってるわよ」
今度は彼女の方から服の中に手を入れて、腹をまさぐる。
「期待した顔したって駄目よ」
白魚の指は海を気ままに泳ぐ何度も回遊しながら、終着の無い場所へと。
「秋羽ちゃんに…構って(いたずら)欲しい」
彼女はベッドを軋ませて笑った。

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