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それっぽいことを言わせたら妖界一

~ 名探偵明彦の事件簿 ~

· 七つの茨道

僕の名前は葛葉明彦、趣味で、探偵を営んでる者、とでも言えばいいだろうか。
多忙な探偵とは言え、時には休息が必要だ。
妻と一緒に、湯煙上る温泉へと出向いたのであった。

「あ~あ、どっかにいい死体(役がい)ないかな~」
「その発言は人としてどうかと思いますよ」

「きゃー!!」
おあつらえ向きの悲鳴と共に物音が近くでする。
「おっ!事件の臭い!」
名探偵の嗅覚で、部屋を見つけ、腰を抜かした少女に声をかける。
「諺が倒れておる…」
「なんだって!?」
諺の近くに寄り、呼吸を確かめる。
不安げに見つめる桜子に、俯きながら首を振る。
「そ、そんな…」
「正常に呼吸もしてますし、体温も暖かく、脈に乱れもありませんよ」
「ぐっ、諺、どうして死んじまったんだ…」

真香の診断を無視して言葉を紡ぎ続ける。
困惑した様子で「あ、あの明彦様…」と語るが、聞こえてない振りをしよう。

「諺の仇を取ってくれ…」
着物の袖を濡らしながら悲痛に訴える少女を前に、僕は強い決意を見せる。
「あぁ、任せてくれ 狐の名にかけて、絶対犯人を捕まえてみせる!」

「さっそく現場検証と洒落こもうじゃないか」
意気揚々と現場へと足を踏み入れるが……。

「黄色いテープがないな…」
「ドラマでよく見ますね 代わりの物を探しましょうか」
「あ、スズランテープで良いんじゃない?」
「そうですね 流石、明彦様です。」
テープを入口辺りに適当に巻き、現場っぽくする。

「えー、被害者は諺、畳に多量の血痕…」
「そんなに血は出ていませんが、血溜まりは出来ておりますね」
「争った形跡は無し…と。顔見知りの犯行か…」

部屋を見回していると、真香が新たな事に気が付く。

「これはダイイングメッセージではないでしょうか?」
畳に血で桜の絵が描かれている。
「桜、……桜子…!」
「もし、桜子様であれば私達に出会う前に、これを消したのではないでしょうか…」
「確かに…じゃあ何故、桜を…」
手に付着した血液はまだ乾いていない。

そして、左には女物の下着と、「これは!?」
「…どうかされましたか!?」
鬼気迫る顔に、応えるように声を潜めて、真剣な眼差しをする。
「コンドームだ…」
彼女に、諺が握っていた物を見せる。

「被害者はこの下着と、コンドームで何を示したかったんだろうか…。」
「女性を示す、にしては少しお粗末の様な気もしますね…」
「ゴムなら男だって持って………… ハッ、真香……… 僕、わかっちゃったよ 犯人が」
「本当ですか!? 明彦様」

「ここに居る皆を集めて。 推理ショーの始まりだ」

「さてー、今回の事件は実に簡単だった。」
「犯人の油断が、この事件を解決へと導いたのです。」

「なぜ呼び出されたのかわかってますね?」
「えっ?さっきまでお風呂はいってたから何も…」
困惑する和雪を放り、社の方へと目を向ける。
「は、犯人候補を呼んだ、そう言いたいんだろ!」
「そうです。」

「犯人はこの中にいる!」

「ねぇねぇ、今のカッコよかった?」
「バッチリでしたよ!」
「え~ほんと? 嬉しい~」

「何を根拠に犯人って決めつけてるんだよ」
「被害者の持っていた物ですよ。女性用下着と、避妊具」
「それがどうしたってんだよ」
「そして畳に書かれた桜の絵。一見、これらは桜子さんを指している様にも見える。

だが、それは真犯人にダイイングメッセージを悟られない様にする為。」

「彼が本当に伝えたかったのは、このコンドーム、いえ、ゴムについてなのです。

死に際に掴んだにしては、一個だけ綺麗に切り取られています。
即ち、これは最後の一つだったのでしょう。そう、ゴムが切れてしまった…、と。
テーブルには飲みかけのお茶が二つありましたからね。
彼女に買わせに向かわせたのでしょう」

「そして、それを見計らい社さんは被害者を殺害。
貴方達二人がこの部屋に来ていた事は、部屋に捨ててあったお菓子の空箱と、

ここにいる従業員が証明してくれます。」
 

「証拠はあるのか、俺がやったって言う!」

「えぇ、その濡れた髪が証拠ですよ」

「……髪、縛っていませんね……」

真香がハッとした表情で彼を見つめる。

「そう。髪ゴムに被害者の血液が付着してしまった事にあなたは気付いてしまった…。
髪に微量に付着した血液はお風呂で流せても、髪ゴムだけは洗えなかった。
隣に居る和雪さんに怪しまれてしまうから。」

「ねぇ、まだ、持ってるんでしょう? 被害者の血が着いたゴムを!」

「………どうしても許せなかったんだ
諺が、諺が……粒餡のほうが美味いなんて言うからぁ…!!」

「社… 俺はこし餡も好きだよ」

「ううっ、うぅ………」

泣き崩れる犯人を背に僕は何も語れず。
ただ、僕は、どら焼きにこし餡って邪道じゃね?と考えるのであった。

「…と、言うことがあったのだよ ワトソンくん」
「俺はワトソンじゃねぇ、大和だ」
「はー、ロックでホ〜ムな事件は起きないもんかねぇ」
「一生起きなくていい。」

「大変です!明彦様 取っておいたお饅頭が無くっています!」

「なにぃ!? それは一大事だ! 大和、現場に行くぞ!」

「なんで、俺が… ったく、しょうがないな」

名探偵明彦の活躍はまだまだ続くが、それは、また別のお話。

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