手にふわふわとした感触が絡み付く。
私が柔らかい髪をくしゃくしゃにしても乙さんは、いつもと変わらない笑顔を崩さない。

髪の毛を手で梳かして、可愛らしいピンで留める。
分け目がついた前髪はいつもと違ってドキッとする。
「いたずら好きだね」
「いたずらじゃありませんよ」
「この手に持ってる物はなぁに?」
グッと握り締めた拳を手で包み込んで証拠を開かせる。

「…手、手、大きいですね!」
下手な誤魔化しをしているのは自分でもわかったが、
乙さんの意識は、少しだけ逸らせた。
「大きいかな」
手の平を重ね合わせて、大きさを比べる。
「嶺子ちゃんは、指、細いね。」
脳が男の人の声だと、意識すればする程、頬が火照る。

「嶺子ちゃんに付けた方が似合うよ」
自分の髪からピンを外して、耳元に指が触れる。

髪を触られるのは、始めてだ。
こんなにも相手の意志が髪から体に伝ってくるものなのか。
乙さんは平然としていたから全く…わからなかった。

髪を整え、指が髪から離れる。
「ありがとうございます…」
あまり乙さんの方を向けない。
まだ指の感覚が残ってるみたいだ
「綺麗だね」
何に対して言ったかわからない言葉だけ残していつもの笑みに戻る。

ベールを纏った花嫁みたいに表情がわからない
あなたは、泣いてる?怒ってる?笑ってる?

好きなのに、好きなのに、
あなたが仮面を貼り付けてるんじゃ、本当に好きだなんて、言えない

休憩が終わって入れ替わりをする。
入れ替わりで来た春歌さんに、髪型を見せる。
「乙さんにやってもらったんです」
「わ~ 可愛いね」
お母さんみたいに優しく褒めてくれる。

「普通、好きでもない奴の髪なんて触らないよな。 愛してるかは別として」
「そうですね。僕も上水流さんには触られたくありませんから」

二人の会話はよく聞き取れなかったけど、

瑠歌君が思いっ切り髪をくしゃくしゃにされてるのは見えた。

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